耐震補強(耐震リフォーム)にかかる費用は?事例や補助金も徹底解説

2024年(令和6年)1月に発生した『能登半島地震』では、多くの住宅や建物が倒壊し、大きな被害が出ました。
さらに南海トラフ地震は30年以内の発生確率が80%程度と予測されているため、「我が家は地震に耐えられるだろうか」と、不安を抱いている方も多いでしょう。

もし自宅に不安要素があるのなら、耐震補強工事を行ったほうが安心です。
そこで本記事では、耐震補強工事が必要な状態をはじめ、費用目安や工期、費用を抑える方法などを説明します。

耐震リフォームをお考えの方は、ぜひ参考にしてください。


1.耐震補強工事・耐震リフォームを検討すべき状態は?

耐震リフォームの必要性は、住宅の築年数や家屋の状態、地盤などから判断します。
まずは、耐震補強工事を検討したほうがよい状態を確認していきましょう。

1-1.2000年5月以前に建築確認を受けた現行耐震基準を満たしていない住宅

建築確認日で見る耐震性能の違い

建物の築年数は、耐震補強工事の必要性をはかる指標のひとつです。

2000年(平成12年)5月以前に建築確認を受けた住宅は現行の耐震基準を満たしていないため、耐震リフォームを検討したほうがよいでしょう。

特に1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた『旧耐震基準』の住宅は耐震性が低く、震度6以上の地震に対しては耐震性が不十分とされています。大地震が発生したときの倒壊リスクが高いので、すぐに耐震リフォームを検討しましょう。

また、1981年6月から2000年5月までの間に建築確認を受けた新耐震基準の住宅についても、接合部や壁の耐震性が十分ではない可能性があるため、補強すべき場所があるかどうか調べてもらうと安心です。

1-2.地盤が軟弱な地域の住宅

住宅の耐震性は、地盤の状態にも大きく左右されます。

軟弱な地盤の上に建つ住宅は、地震発生時に地盤沈下や液状化現象が発生するリスクが高く、建物へのダメージが大きいからです。
どんなに建物の耐震性を高めても、地盤が弱ければ倒壊のリスクは高いまま。家の倒壊を防ぐためには、土台になっている地盤も強化しなければなりません。

たとえば次のような土地は、地盤が弱い可能性があります。

  • 埋立地
  • 山地や丘陵地の盛土部分
  • 後背湿地
  • 低地

とくに田畑や沼地、川、池などを埋め立ててつくった土地は、水分を多く含んでいるため地盤が弱い傾向があります。

新築時に地盤改良工事を行っていないのなら、建物の耐震リフォームだけではなく、地盤の強化も必要になるでしょう。

1-3.1階の壁面積が少ない住宅

建物の耐震性は、壁の配置と量によって決まります。
そのため現行の耐震基準では、壁のバランスに規定があり、配置が均等になるように設計しなくてはなりません。

一方2000年(平成12年)5月以前までは耐力壁の配置について明確な基準がなく、設計士の判断に委ねられていました。そのため1階の壁面積が少ない住宅は、耐震性が不十分な可能性があります。

たとえば1階に大きな開口部(窓)が多い住宅や、ガレージが組み込まれた住宅は要注意。
壁面積が少ないからといって必ずしも耐震性が低いわけではありませんが、耐震診断は受けておいたほうが安心です。

1-4.地震でなくても揺れを感じる住宅

地震以外でも揺れを感じる住宅は、構造的な問題を抱えている可能性があります。

たとえば前面道路をトラックやバスが通ったときや、2階で子どもが遊んでいるとき、強風などで頻繁に揺れを感じるのなら要注意。

他にも床の傾きやきしみ、ドアや窓の開閉不良、壁や天井のひび割れなどが見られる場合は建物自体が変形している可能性があるため、耐震性も不十分な可能性が高いです。

建物の変形は築年数によって起こるものが大半ですが、中には施工不良や環境的な要因によって構造部分が腐食や破損してしまうケースもあります。

日々の暮らしのなかで、地震でもないのに「家が揺れている」と感じる場面が多いのなら、耐震リフォームを検討したほうがよいでしょう。


2.耐震補強工事・耐震リフォームの費用目安と工期

耐震リフォームと聞くと大がかりな工事をイメージするかもしれませんが、実際にどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

ここでは、耐震補強工事の費用目安と工期を見てみましょう。

2-1.耐震診断にかかる費用目安

耐震リフォームの必要性を知りたいときや耐震補強箇所を決めるためには、はじめに『耐震診断』を受けるのが一般的です。

診断方法は一般診断と精密診断に分かれており、その結果をもとに耐震設計を行います。

それぞれの費用目安は以下のとおりです。

内容 費用
一般診断 10万円
精密診断 20万円
耐震設計 30万円

リフォーム前に60万円は痛い出費ではありますが、自宅の耐震性を知り、適切な補強箇所、範囲を知っておくことはとても大切です。

旧耐震基準で建てられた家ならば耐震診断に補助金が支給されることも多いので、まずは自治体に相談してみるとよいでしょう。

▼関連記事

耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
記事を読む

2-2.耐震補強工事にかかる費用目安と工期

木耐協が調査したデータによると、耐震リフォームの多くは、100〜200万円ほどで行われていることがわかります。

耐震基準別 耐震補強工事にかかった金額

出典:『木耐協調査データ 令和元年10月発表』

耐震リフォームにかかる費用は建物の状態によって変わってきますが、耐震補強工事のみを行うのなら、予算は100〜200万円、高く見積もっても300万円くらいで考えておけばよさそうです。

続いて、補強工事別の費用目安も見てみましょう。

補強箇所 補強内容と費用目安
・筋かいによる補強:5~20万円/箇所
・耐力面材による補強:9~15万円/箇所
・住宅全体の補強:150~200万円
・金物の設置:5~20万円/箇所
・朽ちた部分の補修:1~5万円/箇所
・柱の追加、基礎の改修:100万円~
基礎、土台 ・基礎の増し打ち:40~60万円
・ひび割れの補修:4,000円~
屋根 ・軽量な屋根への葺き替え:70万円~

上記を見てわかるように、補強箇所と内容によって費用が大きく変わります。

たとえば壁量が足りていないだけならば、耐力面材を追加するだけなので、100万円以内に費用を抑えられる場合もあるでしょう。
一方で家全体の耐震性が不足しているときには、基礎や壁、柱などのバランスを考えながら補強していくため、費用は目安どおり100〜200万円ほど、もしくはそれ以上かかります。

このように家の状態によって大きく変わるので、一概にいくらとは言えないのが耐震リフォームの難しい部分です。

工期に関しては10日〜1か月前後はかかることが多く、広範囲にわたって補強工事を行う場合は仮住まいが必要になります。一方で壁や柱、屋根などの部分的な補強であれば1〜2週間で終わるため、住みながらの工事も可能です。

また、地盤の弱さによる耐震性の低下が考えられるときには、次の調査費用と補強工事費用がかかります。

内容 費用目安
地盤調査 ・スクリューウエイト貫入試験:5〜10万円
地盤改良
(20坪あたり)
・表層改良工法:50万円程度
・柱状改良工法:100万円程度
・鋼管杭工法:100万円程度

戸建て住宅の地盤調査では、地面に鉄の棒を差し込んで地盤の強さを判定する『スクリューウエイト貫入試験(旧:スウェーデン式サウンディング試験)』を行うのが一般的です。

調査の結果、軟弱地盤であるとわかったときには、地盤の特徴に合わせて改良工事を行います。
費用目安は50〜100万円ほどですが、施工面積と方法によって大きく変わってくるので、詳細な見積もりが知りたいときにはリフォーム会社に相談しましょう。

▼関連記事

【徹底解説】一戸建ての耐震補強、築何年から必要?工事の内容から費用やかかる期間、補助金制度まで
【徹底解説】一戸建ての耐震補強、築何年から必要?工事の内容から費用やかかる期間、補助金制度まで
【徹底解説】一戸建ての耐震補強、築何年から必要?工事の内容から費用やかかる期間、補助金制度まで
記事を読む

3.耐震補強工事・耐震リフォームの実例

前章で説明したように、耐震リフォームの方法はさまざまで、費用も異なります。
ここでは耐震補強工事を行った事例を4つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

3-1.増築を重ねた家の耐震リフォーム

※横にスクロールできます

増築を重ねた家の耐震リフォーム 梁補強ビフォー
増築を重ねた家の耐震リフォーム 梁補強アフター

出典:https://www.8044.co.jp/gallery/265

増築を重ねた築60年の戸建て住宅で、耐震リフォームを行った事例です。

築年数が経っていたため下地部分からしっかりと修繕し、各部屋にも耐震補強を行っています。さらに梁の補強や耐震金物の設置によって耐震性を高めて、安心して暮らせる住まいが完成しました。

費用 211万円
(※耐震工事にかかった費用のみ)
施工面積 186㎡
工期 3か月
(※すべてのリフォームを含む総工期)
築年数 60年

3-2.屋根の軽量化による耐震リフォーム

※横にスクロールできます

屋根の軽量化による耐震リフォーム
屋根の軽量化による耐震リフォーム

出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=2013

家の劣化や傷み、地震への不安を解消するために、屋根の葺き替えリフォームを行った事例です。

もともと重量のある瓦屋根になっていたため、リフォームを機に軽量な屋根材へと交換。耐震性を高めるとともに、台風への不安も一掃するリフォームになりました。

費用 120万円
工期 2週間
築年数 49年

3-3.窓の補強による耐震リフォーム

※横にスクロールできます

窓の補強による耐震リフォーム
窓の補強による耐震リフォーム

出典:https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=1699

築年数が経った住宅の窓に、耐震補強工事を行った事例です。

本来ならば窓ラインに耐力壁が必要でしたが、外壁材の関係で触れることが難しかったため、窓に取り付けるブレースによって耐震性を高めています。
X型のスチールは露出してはいるものの、外壁をいじることなく耐震性能をあげることができました。

費用 535万円
(※すべてのリフォームを含む総費用)
工期 2か月
(※すべてのリフォームを含む総工期)
築年数 48年

3-4.躯体の強化による耐震リフォーム

※横にスクロールできます

躯体の強化による耐震リフォーム
躯体の強化による耐震リフォーム

出典:https://www.8044.co.jp/gallery/301

築40年の住宅を、躯体からしっかりと耐震補強した事例です。

躯体部分の腐食や害虫の食害などが見られたため、土台から交換し、しっかりと修繕してから耐震補強を行っています。

間取り変更やエクステリア部分も含む工事だったため、総費用は2,000万円を超えましたが、安心して暮らせる二世帯住宅へと生まれ変わりました。

費用 2,300万円
(※すべてのリフォームを含む総費用)
施工面積 129.69㎡
工期 4か月半
(※すべてのリフォームを含む総工期)
築年数 40年

4.耐震補強・耐震リフォームでできるだけ費用を抑える方法

耐震リフォームには多額の費用がかかるため、少しでも抑えたいのが本音ですよね。
ここでは、耐震補強工事にかかる費用をできるだけ抑える方法を2つ紹介します。

4-1.自治体の補助金を活用する

1つ目が、自治体の補助金を活用する方法です。
耐震性が低い家屋の倒壊や崩壊を防ぐために、自治体は耐震診断や補強工事を対象にした補助金制度を設けています。

補助金の相場は工事費用に対して〇割という形の割合で設定されていることが多く、5〜8割としている自治体が多いようです。

たとえば静岡県静岡市では、旧耐震基準で建てられた住宅の耐震診断は無料。さらに耐震補強計画や工事に関しても最大100万円(工事費用の8割)が補助されるため、費用負担を大きく抑えられます。

耐震リフォームの補助金や申請方法について詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。

【2025年度版】耐震工事・リフォームに使える補助金は?条件や申請の流れを確認
【2025年度版】耐震工事・リフォームに使える補助金は?条件や申請の流れを確認
【2025年度版】耐震工事・リフォームに使える補助金は?条件や申請の流れを確認
記事を読む

4-2.複数社で相見積もりを取る

2つ目が、複数社で相見積もりを取る方法です。

耐震リフォームは、補強方法がさまざまあり、同じ住宅の耐震性を向上させる場合でも、リフォーム会社によって提案される補強方法や使用する材料が異なるため、工事費用に大きな差が生じることがあります。

相見積もりをとることで、各社の工事内容と費用を比較することができ、納得のいく工事内容と価格を提示してくれる会社を見つけることができます。

また、複数社の見積もりを比較検討することで、適正な費用相場を把握でき、過度に高額な工事を避けることができるメリットも

ただし、費用を抑えることにとらわれすぎるのは要注意!
安く抑えて補強工事ができたとしても、耐震リフォームが不十分だと耐震性は向上しません。
回答

費用だけにとらわれず、耐震診断の結果をもとに適切な提案をしてくれるのかも、しっかりと確認しましょう。

相見積もりを行う会社を探すときには、リフォーム会社を紹介してもらえるサービスの利用がおすすめです。

リフォームガイドでは、お客さまのお住まいの地域や希望をもとに優良会社のみを複数社選定してご紹介、相見積もりの取得までサポートしています。
無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。


5.耐震補強工事・耐震リフォームでよくある質問

最後に、耐震リフォームでよくある質問にお答えしていきます。

5-1.耐震診断は絶対に受けるべき?

耐震診断は義務ではありません。
しかし、自宅の耐震性を不安に感じているのなら、受けたほうが安心です。
回答

診断を受ければ自宅の耐震性がわかるだけではなく、必要な補強工事の内容と優先順位までわかります。

その結果をもとにリフォーム会社に相談すれば、適切な補強工事を提案してもらえるでしょう。

▼関連記事

耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
耐震診断の費用相場を診断方法別に完全解説!補助金制度や業者選びも
記事を読む

5-2.簡単な耐震補強工事はある?

筋かいの補強や耐震金物の設置ならば、比較的簡単に耐震補強を行えます。
回答

範囲を絞った工事ならば工期も1~2日と、短期間で終わることがほとんどです。

ただし、簡単な補強工事で十分な耐震性を確保できるのかは、建物の状態によって変わるため、リフォーム会社に相談のうえ検討しましょう。

また、家の中ですぐにできる地震対策としては、家具の転倒防止対策や窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る方法などがあります。

以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

今すぐできる家の地震対策は?耐震性を上げて家を守る方法を解説
今すぐできる家の地震対策は?耐震性を上げて家を守る方法を解説
今すぐできる家の地震対策は?耐震性を上げて家を守る方法を解説
記事を読む

5-3.耐震補強工事は住みながらでもできる?

部分的な耐震リフォームならば、住みながらの工事も可能です。
回答

居住スペースを移動しながらの工事や、補強箇所を絞って工事を行うのなら、仮住まいを用意することなく耐震リフォームを行えるでしょう。

一方で、基礎部分を解体するような大規模なリフォームは、住みながら行うのは難しい場合がほとんどです。

また、住みながら行える場合であっても、工事中は騒音や埃が発生するため、高齢の方やお子さんなどがいるご家庭ではストレスを感じて負担になる可能性があります。

ご家族のライフスタイルや工事の規模に合わせて、適宜仮住まいの検討をするのがよいでしょう。

▼関連記事

耐震リフォームは住みながらできる?工事内容や注意点を詳しく解説
耐震リフォームは住みながらできる?工事内容や注意点を詳しく解説
耐震リフォームは住みながらできる?工事内容や注意点を詳しく解説
記事を読む

6.まとめ

日本は『地震大国』と呼ばれるほど、地震が多い国。
いつ起こるかわからない地震に備えるためにも、適切な耐震リフォームを行って対策しておくことが大切です。

耐震リフォームにかかる費用は100〜200万円が目安ですが、建物や地盤の状態によっても変わってきます。

詳細な費用を知りたいときや予算を考えたいときには、まず耐震診断を受けましょう。そしてその結果をもとに、安心して補強工事を任せられるリフォーム会社を探してみてください。

相談できる会社がわからないという方は、リフォームガイドにご相談ください。

リフォームガイドでは、耐震リフォームの実績がある会社をご紹介したうえで、相見積もりの取得までサポートしています。

リフォームが初めてでよくわからないという方にも、プロのコンシェルジュが丁寧にご案内いたしますのでお気軽にご相談ください。

あなたにぴったりの会社を、
プロが無料で選定!

厳しい審査をくぐり抜けた優良リフォーム会社の中から、
プロのコンシェルジュがあなたにぴったりのリフォーム会社をご紹介!
有力候補・複数社の、お見積もりの手配を代行します!

  • リフォーム業界に精通したコンシェルジュが、各会社の
    得意分野や評判などを元にあなたに合ったリフォーム会社をご紹介します!
  • 豊富な対応実績から、見積もり後の会社選びの判断にもアドバイスできます!
  • 見積比較後、気に入るものが無ければ追加紹介も可能です!

厳しい審査をくぐり抜けた優良リフォーム会社の中から、プロのコンシェルジュがあなたにぴったりのリフォーム会社を選び、複数社のお見積もりの手配まで対応いたします!

  • リフォーム業界に精通したコンシェルジュが、各会社の得意分野や評判などを元にあなたに合ったリフォーム会社をご紹介します!
  • 豊富な対応実績から、見積もり後の
    会社選びの判断にもアドバイスできます!
  • 見積比較後、気に入るものが無ければ
    追加紹介も可能です!